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2010年10月04日

生物学と化学の間。

先日、職業体験先で一緒に働く研究員の人にトラブルがありました。
近くの大学の生態学研究室から依頼されたサンプルの解析に問題があったらしいのです。

朝一番にクレームが入り、研究所の責任者から分析担当者、同じ分析の知識のある別の研究員まで総出で対応しており、なんだかぴりぴりとした雰囲気でした。

昼過ぎごろ、クレームに対応した全員が揃って帰ってきました。
どうやらかなり怒っているようです。ちっ(怒った顔)

私が声をかける前に、「Noby,ちょっときいてくれる?!」と、実際の分析を担当したキエンさんが早口で言いました。

「どうしたんですか?」とたずねると、「あの人たち、すごく失礼!信じられないわ!」とお怒りの様子。ちっ(怒った顔)

「彼ら、キエンをぜんぜん信頼できないって言うから、その場でウォーターテスト(純水の分析・解析者の分析技術をはかることができる)をして、キエンの分析はちゃんとしてるって伝えてきたんだけど、なんだか満足してないみたいだった。でもこれ以上できることはないわ」と、同僚のアンジェラさん。


話をきいてみると、どうやら原因は生態学研究員と化学分析研究室の「分析」ということに対する認識の違いにあるらしいことがわかりました。

双方の主張は以下の通りです。

生態学研究員の主張

☆アンモニウムを定量してほしかったのに、分析されていたのはアンモニアだった。以前にも同様のサンプルを依頼しており、その時はアンモニウム定量をしてくれたのに。研究の全容は伝えてあるのだから、アンモニウムかどうか確認すべきだ。

☆解析に時間がかかりすぎる。

☆数値が思っていたものと大幅にずれている。予測していた傾向すら見えない。サンプルがアンモニアの解析に使われてしまい、アンモニウムを定量しなおす分が残っていない。また西海岸までサンプリングにいかなくてはならない。

化学分析研究室の主張

☆書類に書かれていたのはアンモニウムではなくアンモニアだった。

☆サンプルの保存のために加えられた酸の種類、量が報告されていない。アンモニウム・アンモニアの分析には酸の濃度が大変重要なので、正確な数値が出せるわけがない。

☆実際の分析と、テレビドラマで見るような分析は違う。1日に100サンプル以下の分析しか現在の技術では不可能。


この話をきいて、分析研究室の研究員たちは「ありえない!分析者の問題じゃない!」とアンジェラさんに同意。

しかしながら動物学出身の私は、なんだか複雑な思いがしました。

というのも、野外でのサンプリングの大変さ、設備の足りなさは実際にやってみると身にしみるからです。ふらふら
丸一日かけて西海岸まで行って、山に分け入ってサンプル(何のサンプルかはわかりませんが)を採取し、保存か抽出のために酸を加えたか、酸の中につけたのだと思われます。
山の中にはピペットもフラスコもないので、サンプルはバケツや薬ビンに放り込みます。どれくらいサンプルがとれるかも行ってみるまでわからないので、必要な薬品の量は未知です。

かつ、動物学、生態学、昆虫学等のサンプルの保存には、薬品濃度が指定されていないことがほとんど。
というのも大抵は「腐らずに持ち帰ることができればよい。濃すぎてサンプルが溶けたりしなければよい」という考えに基づいており、実際それで標本作成には不都合がないため、酸濃度を考慮するという考えがなかったのも私としては納得できます。

しかしそれでは、正確なアンモニウムの定量ができないのも納得できます。

一体どうすればいいのか・・・どちらの分野も好きな私としては複雑です。ふらふら

以前の記事に書いた私の卒業プロジェクトは、生物学者と化学者の間の溝をうめることを目的としています。

土を用いて濃度・成分既知の完全に均一なサンプルを作成したのですが、
生態学者が私の作ったようなサンプルを自分たちのサンプルと一緒に分析すれば、何か問題があったときに解析者に問題があるのか、または依頼者のサンプルの処理に問題があるのかがわかります(よって今回のようなトラブルを防ぐことができます)。また、濃度・成分の違う既知のサンプルを複数用意して同様に分析に出せば、サンプルの処理が粗かったとしても、未知のサンプルのおおまかな傾向を見ることができます。

私の指導教官(彼は化学者です)はこのサンプルを市内の生態学者広めるべく機会があるごとに公演をしたり、セミナーに顔をだしたりしているようなのですが、まだまだ見えないところに問題は山積みなんだなあ・・・と実感しました。

しかし実際この均一なサンプルを作るのには大変手間がかかり、膨大な量の生態学のサンプル分析に追いつくかといわれると、答えはNoです。

「これだけこじれることはめったにないんだけど、学者はどっちも自分の知識が正しいと思ってるからねえ。私も自分が正しいと思ってるし、向こうもそう。Nobyの言ってるサンプルはよさそうだけど、それも行きわたらなければ意味がないわけでしょ。やっぱりお互いに細かく確認をとるしかないのかなあ」と、アンジェラさん。

似たようで違う、化学と生物。卒業プロジェクトは終わりましたが、両方をかじった者として、どうしたらいいのか私はいまだに考えています。

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むかっ(怒り)


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(Noby)
posted by キックオフNZ at 00:00 | Comment(2) | 学校
この記事へのコメント
興味深い話ですね。分野が違うとどんな世界でも視点が変わるので問題が起こると思いますが、なかなか溝を埋めるのは難しそうですね。情報共有の問題もあると思います。
Posted by Kickoff-T at 2010年10月05日 08:15
Kickoff−T様

生物と化学というこれだけ近い分野で起こったことなので、もっと離れた分野だとさらに大きな溝があるのではと思います。
情報を共有しても、お互いその情報の意味を理解できなければ溝は埋まらないし・・・難しいところですね。
Posted by Noby at 2010年10月10日 18:57
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