私のホストファザーは、優しくおおらかな性格のキウィです。

ガーデニングや家のリフォームが趣味で、休日は日中大半を手入れに費やしています。私が日中出かけて帰宅すると、家の中の家具の配置や壁の色が一日にして変わっていた、なんてこともよくあります。

綺麗好きの料理上手なパパ。毎週末は豪華なごはんをふるまってくれ、ワインを飲みながらいろんな話をします。

そんなホストファザーが言ってくれた言葉で忘れられない一言があります。
それは私がニュージーランド到着後約一週間のこと。
語学学校にも通い始めて数日が経っていました。
まわりが何と言っているのか聞き取れず、全然発言できずに一日が終わる。

オークランドのバスシステムは非常に複雑で、バス停を間違えて降り、道に迷ってばかり。

たった一人でこの地にやってきて、家族や友達が恋しくてたまらない、いわばホームシックの状態。

学校に通えるのは6週間だけ、その後住む場所を見つけないといけない。
あまりお金を持ち合わせていないため、一刻も早く仕事先を見つけなければならない。
いろんな困難があるのは重々承知で、それを自分の力で乗り越えるためにワーキングホリデーに挑戦することを選択したのに、日本で応援してくれている友達や、金銭面でも力を貸してくれた家族に申し訳ないし、なんて顔向けしたらいいんだろう…

…と、とにかくたくさん心配事があり、とてつもない不安に襲われました。
バス停からホームステイ先まで約10分間歩かなければならなかったのですが、真っ暗な中を歩いていると、なんでこんなところを歩いているんだろう?とさえ思ってしまいました。
そんな状態で家に帰宅。
ホストファザーは普段通りあたたかく出迎えてくれました。
How are you? How was your day?
といつものやり取り。
でもその会話でさえも嬉しくて、ありがたくて。
ホストファザーのにっこり笑顔を見ると、思わず涙が出てきました。

どうしたの?何があったの?バス停からここまでの道で変なやつでもいたの?声かけられたり触られたりしてない?何かあったら電話していいんだよ?
と、矢継ぎ早に質問を飛ばし、私のことをすごく心配してくれているのが分かりました。
ああ、私はひとりじゃないんだ、日本から約9000km離れたこの地でも、私のことを心配して大事に思ってくれる人がいる、味方でいてくれる人がいるんだ…

そう思うと、涙が止まりませんでした。
ぽろぽろ涙を流す私を見てホストファザーが一言。
「両手を上にあげてごらん。きっと大丈夫。」
ホストファザーがまるでバンザイをするように宙に手を挙げました。
言われたとおりに私も真似をして手を上にあげてみました。
泣きながらバンザイしている自分の姿を客観的に想像すると、すごく間抜けな気がして力が抜け、ふふっと笑ってしまいました。
「そう、youmeは笑っているほうがいい。自分に厳しくしすぎないでいいんだよ。」
とも。そしてギュッとハグしてくれました。

最初からうまくいくはずなんてない。
だめならだめで、それでいいじゃん。
私は私、ゆっくりやっていこう。
おかげで、すごく気持ちが軽くなりました。
今はホストファザーが言ってくれたように、
「きっと大丈夫。」



と余裕をもってゆったり構えて日々過ごしているつもりです。
人のあたたかさにふれ、またひとつ学んだ一日でした。
きっとあの日のことは一生忘れません。
また壁にぶつかったりきつくなったりしたら、
両手を上にあげてバンザイしてみようと思います。

(youme)