なぜ化学肥料工場なのかというと、環境化学の授業で「化学肥料の散布と、残留肥料の環境への影響について」というトピックを学んだからです。
化学肥料に含まれるリンや窒素が、地下水や河川に流れ出して環境に悪影響を与えている、という趣旨でした。
・・・そういうわけでなんだかマイナスなイメージの工場ですが、「実際中で何が行われているかを見てみよう。ぼくらは問題として取り扱ったけど、彼らの意見も聞いてみないと」という先生の一声で訪問が決まりました。
工場の名前はRavendown fertilizer factory。
周辺住民の環境意識の高まりを受けて、3年ほど前から工場の公開見学を実施している工場です。今回の私たちの見学も、快く受け入れてくれました。
当日は現地集合。
大きな工場で入り口が数箇所あったため、クラスメイトたちに電話をして一箇所に集まり、置いてけぼりにならないように待ちます。
しばらくすると、先生が車で現れ、全員分の受付を済ませてくれました。
受付の手続きの間、案内役のMatさんという男性が私たちに安全のためのヘルメットや蛍光ベスト、めがね等を配布してくれました。
じゃあ、ついてきてください!というMatさんの後ろについて、工場見学が始まりました。
まずは、肥料の原料の見学です。
「これが、硫黄の部屋です」
そう言ってMatさんが部屋のドアをあけると・・・
目の前に、10m以上はありそうな巨大な黄色い山が!
「こっちはリンの部屋、輸入元はナウル、ベトナム、モロッコです」
そう言ってMatさんが次の部屋のドアをあけると、若干色合いの違う3種類の灰色の山が見えました。
3種類の山は、リンの純度と値段が違うのだそうです。
純度の低いものにはカドミウムが含まれており、精製しないと使えないのですが、純度の高いリンを産出するモロッコの政治情勢が不安定なため、モロッコ産のリンが買えないときには別の産地のもので代用しているのだとか。
Matさん「これはカルシウムの部屋、クリスマス島からの輸入品です」
カルシウムは、最終的に調合し終わった肥料を安定化させるための添加物だそうです。
Matさん「これは窒素の部屋、色が白いのは尿素の結晶だから。サウジアラビアからの輸入品です」
この山は本当に真っ白で、茶色や灰色の山の中でもひときわ目立っていました。
ひととおり原料を見終わると、次はプラントへ進みます。
Matさん「さっき見た原料の山を、加熱して、加水して、再度脱水して化学反応を進めます。肥料の合成の過程で出る硫黄酸化物は、このプラントの管を通る間に熱されて○△※●□・・・」
・・・む、難しい!!

すごく要約すると、原料を加熱・加水して化学合成を促して肥料のもととなるものを作り、合成後に発生する有毒ガスは、長―いパイプを通して冷却・フィルタリング・再加熱等の処理をすることによって無毒化してから排出されるんだそうです。
次にMatさんが連れて行ってくれたのは、敷地の端に5つほど設置された小さな装置のある場所です。この装置は毎日一定時刻に空気を取り込んで自動的に分析し、装置から有毒ガスの漏れがないかをチェックしています。
一通りの見学を終え、私は「へえー、環境にすごく気を配っているんだなあ」と思ったのですが、先生は渋い顔。
最後に設けられた質問タイムに、「原料の山の一部が雨ざらしになっているが、その雨水はどこへ行くのか」という質問をしていました。
「特に決まった排水溝や処理施設はありません」と回答したMatさんに、先生は「近くの川のリン濃度が前回調査したとき基準値を超えていたのは、リンを多く含んだ原料に触れた雨水が川に流れ込んでいるからという可能性がある。ぜひ調査をしてほしい」と返答していました。
山の大きさに気をとられてそこまで見ていなかった私たちは感心しっぱなし。科学者になるにはこれくらい観察力がいるのか・・・と感心しました。
農業と牧畜のイメージの強いニュージーランドですが、それに関連した化学工場、食品工場で働く人も大勢います。こういった企業は大学・専門学校の化学系学部、または食品の輸出に関わる商社と連携して幅広い仕事をしています。
工場では大きな機械が動き、オフィスでは取引・監査・訪問などのための電話がひっきりなしにかかってきて、大きなトラックができた製品をどんどん運び出していく・・・
なんだかニュージーランドの違った一面を見た気がした工場見学でした。


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(Noby)