
でも今回は廊下から聞こえる。しかも音が違う。そのうち録音された「緊急事態発生」と言う声まで繰り返し聞こえてくる。
一瞬ドキッとしたが「まあ誤作動か何かですぐに鳴り止むだろう。」と高を括っていたが、鳴り止まない。
一緒に住んでいる彼が真面目な顔で「早く靴をはきなさい」といい、そこで少し「もしかしたら」と疑う自分がいた。
とにかくトレーナーをはおって貴重品だけ持って部屋をでた。
いつもの癖でエレベーターの前へ行ったが、
「いやいや、非常階段だっ!」と階段へ向かう。同じ階から人が出てくる気配もなく、
「私達だけ焦って飛び出てきた!?」と一瞬なぜか恥ずかしいわけでもないのに、非常階段で他の人の足音を聞いた時、「皆も避難している」とほっとした。

他の人もアイスを食べていたりお喋りをしたり平静を保っていた。階段を下りて行くうちになぜか少しドキドキしてきた。
「ホントは皆ドキドキしているのかな」と思いながら、彼は彼で
「ビール持ってくりゃよかった」と言っているが顔は少し真剣。
アパートの外に出た時には既に多くの人が避難していた。
外に出たとたんに
「こないだ買ったばかりの黒いジャケットまだ1回しか着ていない・・」とお気に入りの服のことが頭に浮かんだ。
彼は彼で
「ご飯食べ終わっててよかった。でなきゃ戻ったころには冷めちゃうもんね」と食べ物のことが頭に浮かんだ。
「なんでそんなことが」と思うが、でもこれは私達の正直な思考回路。
避難して一番初めに出た言葉だった。
その後すぐに消防車が5台も来て、その早さに驚きながらも安心した。
結局原因はわからないが火事ではなかった。

避難している時誰もパニックではなかった。半分ドキドキしながらも、たぶんそれ以上に「まさかホントに」と自分に何かが起きるわけないと高を括っているのか。
ニュースで沢山の事件をみて「怖い」「悲しい」と感情を抱いてもなぜか他人事に思ってしまう時がある。頭では「自分にもいつ何が起こるかわからない」とわかっているのに、きっとその一方で「まさか」と他人事に思う。
でも少し前の友達の事故の事があってから、そして今回の非常階段を使って学校の練習ではない、本当の「避難」を経験してから「自分にもいつ何が起こるかわからないんだ」とつくづく思った。
そしてだからこそ「今日も一日ありがとう」と言えるハッピーな気持ちで毎日終わらせたいと強く思った。

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(Ai)